診療の特色
胃痛・腹痛について
これにはレッドフラッグがいくつもあります。
胃潰瘍、嘔気に隠れている虫垂炎や腎盂腎炎、心筋梗塞や脳の病でも嘔気が生じます。腹部大動脈瘤、イレウス、胆嚢炎や膵炎なども鑑別しないといけない。
その多くは血液検査をすればだいたい見当がつきます。CRPという炎症反応が院内ですぐに調べられますから、普通の腹痛として漢方薬で治療していいのか、レッドフラッグとして総合病院に紹介するのか鑑別するのに参考になります。
さて普通の腹痛と診断したあと西洋医学はなにをしてあげられるのか。嘔気にナウゼリンの座薬をつかったり、腹痛にブスコパンで過剰な蠕動運動を抑えようとしたり、そんな対症療法になります。
原因をはっきりと視覚化できない機能的な腹痛の治療を西洋医学は苦手としている。
冷え性で痩せている人の胃痛は胃自体を元気にする補気、温める補陽をしないと治りません。このような治療が西洋医学にはないのです。
補気には人参や白朮を含んでいる四君子湯、補陽には乾姜や附子を含んでいる人参湯や附子理中湯をつかいます。
それからストレスなどで気の巡りが悪くなり水が動かなくなると胃が水っぽくなって不調になる。これを気滞による痰飲といいます。治療は理気化痰。気を巡らす薬として枳実・厚朴・陳皮があり、柴胡も含まれてきます。痰飲を溶かすのが半夏になる。
こうした生薬を含む漢方薬としては茯苓飲、半夏厚朴湯、平胃散、二陳湯、六君子湯、四逆散などがあげられます。
下痢や臍辺りの痛みのような下部消化管の症状には裏寒、つまり消化器の冷えを疑います。芍薬を含む真武湯で温めてあげる。
冷えのある女性の下腹部痛は当帰四逆加呉茱萸生姜湯で治ることがあります。